[12] FUJICA COMPACT

小型軽量化を狙うFUJICA COMPACT

1959年にOLYMPUS PENが発売され、ハーフサイズブームに入り、各カメラメーカーが競ってハーフサイズカメラの商品化に入った。富士フイルムでは1962年3月に発売されたFUJICA AUTO Mを発売したものの、ハーフサイズカメラの市場が大きく拡がっていくのを無視できず、1963年11月FUJICA HALF を発売し、遅ればせながら、ハーフサイズカメラ市場に参入した。(ハーフサイズカメラについては、別項で取りまとめる)

 そして、コダックが写真撮影の簡便化による写真の普及を狙い、KODAK が、 INSTAMATICシステムを1963年に発表し、その対抗策として、ヨーロッパで君臨していたAGFA が RAPID システムを1964年に発表した。

 富士フイルムでは、もちろん、インスタマチックシステムのカメラの開発をし、FUJIPETを開発した甲南カメラ研究所と共同で、カメラの蓋をスライドして開けるケースレスカメラで、沈胴式のINSTAMATICシステムのカメラの試作機をつくったものの、わが国では、このシステムは普及しないと判断し、AGFA方式のRAPIDシステムの採用に踏み切り、1965年6月にFUJICA RAPID S を発売した。(RAPIDシステムのカメラについては、別項で取りまとめる)

 ハーフサイズカメラ、インスタマチックカメラ、RAPIDシステムカメラの流れをくんで、35㎜フルサイズの軽量化、小型化の機運も高まり、富士フイルムでは、1967年10月に小型軽量のFUJICA COMPACT 35 を発売し、この時点から、コンパクトカメラという総称が各カメラメーカーはじめ写真業界全般で使われるようになった。

 FUJICA COMPACT 35

1967年10月に発売されたFUJICA COMPACT 35 は、35㎜判カメラでありながら、440gと、軽量なカメラである。レンズは、広角気味のFUJINON 38㎜ f2.8、シャッターはプログラム式EE機構を組み込んだSEIKO Lシャッターを採用し、国産カメラのコンパクト化へのさきがけとなったカメラである。

 また、世の中のカラー写真化の進む中で、「すばらしいカラー写真が写せます」をキャッチフレーズに宣伝活動は積極的に行われた。富士フイルムグループが全国各地で、カラー写真の需要拡大をはかる“フジカラー撮影会”もマニア層だけではなく、ファミリー向けの撮影会も開催し、あわせて、このFUJICA COMPACT 35 の無料貸し出しを行った。なお、貸出用のカメラは、メーカーの富士フイルムだけではなく、全国のカラ―ラボ、写真商社(特約店)、主力カメラ店が常時所有し、それらの会場などに持ち込んでいき、好評を博したものであった。

 FUJICA COMPACT は、基本的考え方の「すばらしいカラー写真が写せます」を基本に、1970年までの4年間、常に改良を加え、性能の向上と軽量化を図り続けた。

 

FUJICA COMPACT D

FUJICA COMPACT 35 をベースにして、レンズを FUJINON 45㎜ f1.8に、露出計をcds式EEに変更するとともに、デザインも高級感をもたせて、1968年6月に発売した。

 

 FUJICA COMPACT S

FUJICA COMPACT 35 をベースにして、操作性や、小型軽量の特徴は生かし、さらに性能向上を図り、1969年7月に発売した。性能面では、レンズをFUJINON 38㎜ f2.5に、焦点調節は、二重像合致連動距離計を内蔵し、セルフタイマーも付けた。また、デザインも若者向けに改良を加えた。

 

New FUJICA COMPACT 35

操作は簡単、小型軽量で、しかも、フイルム画面は35㎜フルサイズ、失敗のない完全EE機能に加え、レンズはカラー再現に定評のあるFUJINON 38㎜、f2.8使用と、FUJICA COMPACT 35 の基本的な考え方を踏襲し、特に、ボディのプラスチック化を図り、400gを実現した。ボディのカラーも、ブラック、ブルー、アイボリーの3色をそろえ、1969年9月に発売した。

 

FUJICA Light COMPACT 35

New FUJICA COMPACT 35 をさらに改良し、軽量360gにし、1970年6月に発売した。基本的には、New FUJICA COMPACT 35 とは、変わりはないが、外観的には、フイルム巻上げレバーの部分に飾りをいれている。ボディカラーも、New FUJICA COMPACT 35 同様、ブラック、ブルー、アイボリーの3色をそろえた。

 

FUJICA Light COMPACT S

従来のFUJICA COMPACT S を改良し、重量を従来の520gから400gまで軽量化し、FUJICA Light COMPACT 35 と、同時発売した。デザイン面では、FUJICA Light COMPACT 35 同様、フイルム巻上げレバーに飾りをいれた。

 

FUJICA COMPACT DELUXE

従来のFUJICA COMPACT D を全面的にデザイン変更し、スマートさを出し、1970年6月に発売した。

 

FUJICA COMPACT 35

FUJICA Light COMPACT 35 に、ストロボ用ホットシューを装備し、FUJICA COMPACT 35 シリーズの最終機として、1970年秋以降に自然切替で、順次発売された。

 

FUJICA COMPACT S

FUJICA COMPACT 35 同様に、FUJICA Light COMPACT S に、ストロボ用ホットシューを装備し、FUJICA COMPACT S として、1970年秋以降に自然切替で、順次発売された。

 

なお、このFUJICA COMPACT 35 シリーズでは、カメラの梱包形態についてもチャレンジし、当初のFUJICA COMPACT 35では、「SHOKGARD」方式という、カメラ輸送中の衝撃に耐えられるように設計された最も新しい包装形式を採用し、そのまま、運送に出しても問題が起こらないとのことであったが、1個の大きさが大きすぎ、保管スペースはとるし問題が多く、廃止され、New FUJICA COMPACT 35 ではコンパクトカメラにふさわしいコンパクト化を狙った包装形態に変更された。

 また、FUJICA COMPACT 35 は、各カメラメーカーの製品動向もみながらの検討となったようだが、ZEISS IKONTA35KODAK RETINA のような蓋をしめるタイプのFUJICA 35 も試作されたカメラも参考にしながら、小型軽量化を基本にして、開発をされたとのことである。