雪の美術館Ⅰ

雪の美術館Ⅰ

娘が休みをとって帰ってきたので、誘われて、約2年ぶりぐらいで雪の美術館に行った。

真冬にもかかわらず、次から次へと見に来られる方の姿を見て、噂通りに人気のスポットになっていると実感した。

昨年、ディズニー映画「アナと雪の女王」が大ヒットし、とどまることを知らない“アナ雪”旋風は、北海道旭川市にある「雪の美術館」は、映画の世界観を“ありのままで”体験できると話題となった。
内装が全て雪をコンセプトに造られた「雪の美術館」は1991年にオープン。氷点下15度に保たれた氷柱をガラス越しに見ることができる「氷の回廊」や、360度、雪の結晶の模様で飾られた「クリスタルルーム」、雪の結晶をイメージした六角形のらせん階段・・・と。

ディズニーと直接の関係はないが、アナ雪が封切られると、内装が映画に登場する「氷の城」に似ているとインターネット上で評判になり、来場者が爆発的に増加。一昨年までは1日に10人ほどしか来場者がいなかった日もあったというが、今では、連日100人以上が押し寄せているとのこと。

レンタルドレスを着用して記念撮影する「お姫様体験」企画をスタートさせた後でもあり、タイミングは最高。映画の主人公のアナとエルサになった気分を味わえると人気。結婚式場としても利用可能で、ますます拍車がかかりそうな気配。
 

そんな、雪の美術館は、優佳良織工芸館(1980年)、国際染織美術館(1986年)の後、1991年に開館し、北海道美術工芸伝統村として発足したが、バブル崩壊のあおりをうけるとともに、工芸村を通らずに旭川市内に入る高速道路の完成に伴い、厳しい環境に遭遇したが、新たな支援のもとで、存続されてきた。

 

【 鹿島建設の鹿島紀行より抜粋】

木内綾さん。北海道の自然を織り込んだ独創的な手織り紬「優佳良(ユーカラ)織」を創作し,国際的な美術工芸品にまで育てた人である。紬の素材は羊毛。一つの作品に200以上の染色が施される。作品のテーマは常に北海道の自然だ。
旭川市街を望む丘陵に、木内さんが「優佳良織工芸館」を竣工させたのは1980年5月のことだった。本館の二つの塔、銅板葺きの屋根、赤レンガを積んだ高い腰壁と上部の白い壁が印象的な建物である。さらに1986年には敷地内に「国際染織美術館」を完成させた。「土の匂いが伝わるものを」という木内さんが、精魂込めて創りあげた郷土愛の結晶である。
そしてもうひとつ。夏場にも北海道の雪と氷の恵みを展示できる空間を作りたい、との願いを実現したのが、1991年5月に完成した「雪の美術館」だった。

晴れた日は大雪山が間近に見える。中世ヨーロッパの城を思わせるビザンチン様式の外観を持つ雪の美術館は、建物から展示品まですべて雪と氷のイメージで作られた、世界でも類を見ない美術館である。
入口から64段の螺旋階段で地下へ降りると、そこはもう雪と氷が織りなすファンタジーの世界。圧巻は5mの高さから噴出す大氷瀑が30mに渡って連なる「氷の回廊」だ。通路左右がガラス張りの氷室になっていて、刻々変化するマイナス15度の氷の自然の造形を見ることができる。
奥に進むと、雪をイメージしたステージと200席の「音楽堂」。天井には2万8000号の巨大なキャンパスに北の空が描かれている。このほか雪の結晶を集めた「スノークリスタルミュージアム」、大雪山の四季の変化が鑑賞できる「シアター」、多目的スペースの「雪の館」などで館内は構成されている。

クリスタルルームには,天井から壁一面に雪の結晶がステンドグラス風に飾られた。六角のプリズム、樹枝、針、扇状・・・。繊細で整った形、しかも一つとして同じものはない。天から舞い降りる雪の結晶はどのように創られ、なぜいろいろなパターンがあるのだろう。雪の結晶にはどんなメッセージが込められているのか。
今から半世紀前、雪の結晶に魅せられた物理学者が、世界で初めて人工の雪の結晶をつくるのに成功した。北海道大学理学部教授の故中谷宇吉郎さんである。
中谷さんは人工雪の実験から「雪の結晶の形の変化は成長する時の大気の条件による」として、水蒸気の湿度と温度による形態変化を表す「雪の結晶のダイアグラム」を作った。雪の形を観察すれば上空の気象条件を推定できるというのである。中谷さんは「雪は天からの手紙」という有名な言葉を残している。