[7] FUJICAFLEX AUTOMAT(1)

FUJICAFLEX AUTOMAT

FUJICAFLEX AUTOMAT は、1954年5月華々しく発売された。当時は、大卒初任給が平均で、8700円の時代、ケース付定価65000円というカメラであった。今日の価格に換算するのは難しいが、大卒初任給が200000円前後とすると、なんと、1500000円くらいの価格となる。

FUJICAFLEXが制作プランにのったのは1948年というから、FUJICASIXⅠ型が市場に出た時から研究に入り、6年もの長い期間をかけて開発されたことになる。あとで、別項でまとめていくが、はじめは、一般向けの二眼レフの開発を進めたが、途中から、諸元を高級二眼レフの開発に切替え試作機制作を積み重ねてきた。

市場では、ROLLEY FLEX の模倣による二眼レフ製品化がすすんでいたが、独自の主張をいれたオリジナリティの高いカメラを開発した。その特徴としては、撮影レンズとファインダーレンズとを前玉同時繰り出し式にして、70㎝までの近接撮影が出来るようにしたり、焦点調節とフイルム巻上げを兼用ノブにして、迅速撮影化を図るなど、各種のアイデアを盛り込んだ。

このカメラは、「正確、鮮鋭、簡便、迅速、接写、堅牢、優美、保証」を前面に出し、「プロフェッショナル写真家に要望されるすべての機能を完備した高性能万能二眼レフ」として発売され、当時の我が国カメラの最高技術を発揮したカメラとして評価された。

しかしながら、大きさは、幅82㎜、奥行111㎜、高さ215㎜(ピントフード折りたたみ時150㎜)と大きく、さらに重さは1280gと重たいカメラとなり、「価格は高く・・」「大きさは大きく・・」「重さは重く・・」と三拍子揃ったカメラは、残念ながら、発売1年後の1955年4月に生産中止をしてしまった。

このFUJICAFLEX AUTOMAT 初期生産ロットのみで、その後の生産はされなかったとの話もあるが、市場にはそれほど多くの台数が出たとは考えられない。中古市場でも、めったに見られない機種と言ってもよいかもしれない。